オンライン学校ベースのメンタルヘルスと薬物乱用プログラムの長期的影響: オーストラリアにおける72ヵ月間の研究

オーストラリアで行われた研究では、オンラインスクールプログラムが思春期の不安、うつ、薬物乱用を予防する長期的な効果を調べた。72ヶ月にわたる追跡調査で、4種類のプログラムの有効性を評価した。

背景

世界的に精神疾患と薬物乱用による経済損失は莫大であり、2030年までに倍増すると予測されている。特に新型コロナウイルスの流行は若者のメンタルヘルス悪化を加速させている。また、飲酒開始年齢は遅れているものの、15歳から18歳にかけては急増する傾向にある。こうした問題に対して、予防プログラムの長期的な持続可能性や、変化する若者や社会のニーズに合わせた改善が求められている。

研究について

本研究は、2013年9月から2016年12月にかけてオーストラリアの3州にある71校の中学生を対象に実施された。計6,386人が参加し、4つのグループに分けられた。

  • 包括的プログラム(CSC)
  • 薬物乱用予防プログラム(CSSU)
  • メンタルヘルスプログラム(CSMH)
  • 標準的な健康教育

参加校はランダムに割り当てられ、プログラムは社会学習理論と認知行動療法に基づいており、教室でのセッションを通じてメンタルヘルスと薬物乱用について学んだ。CSSUとCSMHはそれぞれ薬物乱用とメンタルヘルスに特化した内容で、セッション数は少なかった。

当初は84ヶ月までの追跡調査が計画されていたが、参加率の低下のため中止となり、早期の評価に注力された。追跡調査はウェブアンケートで行われ、参加率を上げるため金銭的報奨や複数の連絡方法が用いられた。

評価項目は、アルコールや大麻の使用頻度、不安や抑うつ症状であり、信頼性の高い自己報告尺度を用いた。データの階層構造を考慮した多重レベル混合効果モデルによる分析が行われ、介入の長期的な有効性を調べるために「治療割当て分析(intention-to-treat analysis)」が用いられた。

研究結果

追跡調査は最大で72ヶ月間行われ、30ヶ月目の時点でさらに参加を拒否しない生徒を対象とした。当初の参加者全員を対象とした分析では、平均年齢13.5歳、女性の割合が半数以上だった。

追跡調査の結果、参加率はグループによって差があり、CSCグループの維持率が高かった。有害事象は認められなかった。

飲酒に関しては、対照群では毎週の飲酒や過度の飲酒が時間とともに増加したが、CSCグループではこの増加が有意に遅延した。しかし、72ヶ月時点での毎週飲酒や過度の飲酒の発生率に、CSCグループと他のグループとの間で顕著な差は見られなかった。

同様に、大麻の使用頻度も対照群では増加したが、介入グループ間で時間経過による有意な差はなかった。

不安や抑うつなどのメンタルヘルスについても、対照群では時間とともにわずかに増加したが、追跡期間を通じて介入グループ間で有意な差は見られなかった。

ベースラインの要因と参加率の低下を調整した感度分析でも同様の傾向が示されたが、効果推定値の不確実性は高まった。

結論

本研究は、オンラインスクールプログラムが72ヶ月にわたり、中学生のメンタルヘルスと薬物乱用を予防する効果を調べたものである。その結果、CSCプログラムは毎週の飲酒や過度の飲酒の増加を有意に遅らせることがわかった。

しかし、この結果はCSCグループと対照群とのベースラインの差によって影響を受けている可能性があり、結果の信頼性を弱めている。感度分析により、アルコール依存症、大麻使用、メンタルヘルス症状の長期的な有効性に関する結論の不確実性もさらに高まった。

この研究は、このようなプログラムは当初は特定の行動を抑制する効果があるかもしれないが、長期的な有効性には継続的な介入が必要であることを示唆している。