- Kiyoko Iwatsuki-Horimoto, Hiroshi Ueki, Mutsumi Ito, Sayaka Nagasawa, Yuichiro Hirata, Kenichiro Hashizume, Kazuho Ushiwata, Hirotaro Iwase, Yohsuke Makino, Tetsuo Ushiku, Shinji Akitomi, Masaki Imai, Hisako Saitoh, Yoshihiro Kawaoka. (2022). Can SARS–CoV-2 transmit from a dead body? bioRxiv. doi: https://doi.org/10.1101/2022.08.29.505777 https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2022.08.29.505777v1
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(SARS–CoV-2)が死体から感染する可能性があるかどうかを、プレプリントサーバーbioRxiv*に投稿された最近の研究により明らかにした。
研究チームは、COVID-19に感染したハムスターの死体からSARS–CoV-2の感染性を検証した。生後6ヶ月のシリアンハムスターにSARS–CoV-2/UT-NCGM02/Human/2020(武漢株)を感染させ、感染後24時間または48時間後に安楽死させた。死体および安楽死させた感染ハムスターから臓器を採取し、ウイルス滴定を行った。
さらに、死体への防腐処理がウイルス感染防止に有効かどうかも評価した。これは、死体の心臓の頂点から防腐剤を注入し、血液を排出することで実現した。防腐処理を施した死体1体と未知のハムスター2匹を1グループとし、合計10グループを調査した。
その結果、生きたまま感染したハムスターは、肺と鼻腔内のウイルス力価が高かった。COVID-19感染後24時間および48時間の同居条件下で、すべての生きた感染ハムスターの間でSARS–CoV-2の感染が認められた。また、安楽死させたハムスターの鼻腔および肺では、24時間後に高いウイルス力価が確認された。さらに,安楽死した感染ハムスターと同居した2群のうち1群からSARS–CoV-2の感染が認められたが、この同居条件は感染後24時間からであり48時間からではなかった。
感染ハムスターの死体と同居していたナイーブハムスターの評価では、死体が8群中2群にSARS–CoV-2を感染させたことが示された。全体として、10匹のハムスター群のうち3匹が感染死体からナイーブハムスターへのウイルス感染を認めた。このことから、感染死体は感染初期にSARS–CoV-2を感染させる可能性があることが示唆された。
また、エンジェルケアされたハムスターの肺と鼻腔内には高いウイルス力価が認められた。しかし、これらの遺体は、非感染ハムスターにSARS–CoV-2を感染させることはなかった。このことから、エンジェルケアは感染死体からのSARS–CoV-2感染を効果的に防いでいることがわかった。一方、防腐処理したハムスターの遺体では、防腐剤に含まれるホルムアルデヒドがウイルス滴定に用いた培養細胞に毒性を示すため、ウイルス滴定を行うことができなかった。
しかし、防腐処理した遺体からナイーブハムスターへのSARS–CoV-2の感染は観察されなかった。このことから、防腐処理は死体からのSARS–CoV-2の感染を効果的に阻止することが示唆された。
結論
本研究の結果、SARS–CoV-2はCOVID-19感染死体から死後ガスを介して効果的に感染する可能性があることが示された。しかし、エンジェルケア処理とエンバーミングは、死体からのウイルス感染を防ぐことがわかった。研究者らは、COVID-19感染死体の取り扱いにおいて、SARS–CoV-2感染からの保護が重要であり、感染死体は適切に処理されなければならないと考えている。