新型コロナウイルスによる髄膜炎・脳炎の初事例

  • Moriguchi, T., Harii, N., Goto, J., Harada, D., Sugawara, H., Takamino, J., Ueno, M., Sakata, H., Kondo, K., Myose, N., Nakao, A., Takeda, M., Haro, H., Inoue, O., Suzuki-Inoue, K., Kubokawa, K., Ogihara, S., Sasaki, T., Kinouchi, H., … Shimada, S. (2020). A first case of meningitis/encephalitis associated with SARS-Coronavirus-2. International Journal of Infectious Diseases, 94, 55–58. https://doi.org/10.1016/j.ijid.2020.03.062

武漢市 (中国) で発生した新型コロナウイルス (SARS-CoV-2) は世界各国に急速に拡大している. 本論文は、SARS-CoV-2 に関連する髄膜炎の初めての症例を報告する.

この患者は意識消失を伴う痙攣のため救急車で搬送されてきた. 渡航歴はなかった.

発症1日目に全身倦怠感と発熱を覚え、2日目と5日目に近所の医師を受診し、ラニナミビルと解熱剤を処方された.

発症9日目、家族が自宅を訪れた際、意識不明で床に倒れており、嘔吐物が散乱しているのを発見した. 患者は直ちに救急車で搬送された. 搬送中に、約1分間続く全身性のけいれん発作を一時的に起こした. 明らかな項部硬直がみられた.

鼻咽頭スワブからの検査では SARS-CoV-2 特有の RNA は検出されなかったが、脳脊髄液からは検出された. 血清サンプルでは、HSV-1 と水痘帯状疱疹の IgM 抗体はいずれも検出されなかった.

脳 MRI 検査では、右脳室壁側沿いの高信号強度と、右内側側頭葉および海馬の高信号強度変化が認められ、SARS-CoV-2 髄膜炎の可能性が示唆された.

この症例は、中枢神経症状を呈する患者に対して、SARS-CoV-2 感染の可能性を念頭に置くよう医師に注意を促すものである.