30代A医師は感染後すぐ回復したが、なぜか患者の名前が覚えられなくなり…新型コロナウイルス最新研究からわかった「持続・潜伏感染」の恐怖(宮坂 昌之,定岡 知彦)
「新型コロナウイルスは風邪のようなもの」と思い始めた人も多いだろう。しかし、決してそうではないことが最新研究から明らかになりつつある。新型コロナウイルスがほかのウイルスと異なる「きわめて厄介な性質」とはどんなものなのか。
そんなA医師が半年前の冬に新型コロナウイルスに感染した。
幸い、若くて体力のあるA医師の回復は速く、すぐに熱が下がり、退院して職場に復帰した。ところがその後、体調がなかなか戻らない。論文を読んでも頭に入らず、外来で処方箋を書こうとしても薬の名前がなかなか出てこない。1~2ヵ月すれば良くなるかと思っていたが、次第に症状が進み、だんだん患者の名前が覚えられなくなった。
さらに症状は悪化し、ついには自分がどこにいるのかもおぼつかないような状態になってきた。同僚に話したところ、すぐに検査を受けるべきという。
急いで検査を受けたところ、なんと脳に血管が詰まった箇所(梗塞巣)がいくつも見つかった。新型コロナウイルス感染をきっかけに血管の内皮細胞や血小板が影響を受けて血管が詰まりやすくなり、そのうえに肥満という危険因子が状況を悪化させ、脳の細い血管がところどころ詰まっていたのである。