WHOが「空気感染」を認める?用語変更のポイントと問題点

世界保健機関 (WHO) は、空気感染に関する用語の標準化を試みる報告書を木曜日に発表した。COVID-19 パンデミック中、「飛沫感染」「空気感染」「エアロゾル感染」といった用語が乱用され、病原体の感染経路をめぐる混乱を招いていた。

報告書での表現の変更を要約すると、「空気感染」は以前の「飛沫感染」と「空気感染」をあわせた概念になり、「吸入」は「空気感染」に、「直接沈降」は「飛沫感染」に置き換わる。報告書は幅広い分野の専門家から意見を集めて作成された。

この報告書には優れた点と問題点がある。

優れた点

  • 短距離の空気感染が、全ての (COVID-19 だけではない) 空気感染において不可欠な要素であることを認めた。これは非常に重要であり、医療従事者をはじめとする労働者は、呼吸器感染症の疑いのある患者と接触する際には、防塵マスク (FFP2/3、N95) を着用する必要があることを意味する。
  • エアロゾルは、以前誤って用いられていた5マイクロメートルではなく、100マイクロメートル以下の粒子にも存在することを認めた。
  • COVID-19 が空気感染であることを明示的に認めた。我々は当初からそれを知っていたが、WHO がようやくこの点をはっきりさせたのはここ最近の事だ。この誤りが与えた影響に対する謝罪はないが、それは期待してもいなかっただろう。

問題点

  • 空気感染対策として換気しか言及されていない。ろ過や殺菌 (UV/遠紫外線) については触れられていない。このような大きな抜け漏れがあるのは不可解だ。
  • さらなる多分野連携が必要だ。空気感染の専門家や工学者が従来のWHOの医師に加わったのは素晴らしいが、依然として欠けている重要な分野がある。職業衛生学者 (マスクのエキスパート)、経済学者、倫理学者といった人たちだ。複雑な問題解決にはあらゆる分野の知恵が必要だ。
  • 「空気感染」よりも「空気中を通過して」や「吸入」の方がわかりやすい表現だという提案は、偽善的だ。我々は既に機能的な用語を持っていたのに、今回のような言い換えは混乱を招くだけで何の利点もない。
  • 公衆衛生の基本原則である「予防原則」 (公衆を有害な曝露から守る社会的責任) について合意が得られていない。これは2003年のSARS (重症急性呼吸器症候群) 流行時にも大きな問題であり、今回のパンデミックでも同様だ。依然として基本的公衆衛生原則を否定しようとする姿勢は理解できない。
  • 「公平性」を持ち出して、防塵マスクが不要であると説明しようとするのも問題だ。これは、ある国の労働者の保護が不十分だからといって、世界中の労働者全員の保護を不十分にするようなものだ。公平性とは、全員に優れた保護を提供することを意味する。最低水準にまで保護を引き下げるのではない。誰もが「この障害を残したり死に至らしめる可能性のある病気にかかるリスクを平等に持つべきだ」などがあってはならない。

結論

WHO は空気感染 (徐々ではあるが) を認める方向に動いている。しかし、用語の変更は不自然で必要性も感じられず、パンデミック初期に「空気感染」という言葉を使うことができず (予防策を推奨できなかった) 者たちだけが利益を得るように見える。

「提案」であり「多段階プロセスにおける第一歩」という言葉が、改善の余地があることを示していることを願う。我々は必然的に悪い方向に向かっているわけではない。今後の議論においては、WHO が公衆と医療従事者の安全を最優先事項にするよう強く求める。