- Aki Sugano, Yutaka Takaoka, Haruyuki Kataguchi, Minoru Kumaoka, Mika Ohta, Shigemi Kimura, Masatake Araki, Yoshitomo Morinaga, Yoshihiro Yamamoto. (2022). SARS–CoV-2 Omicron BA.2.75 variant may be much more infective than preexisting variants. bioRxiv. doi: https://doi.org/10.1101/2022.08.25.505217 https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2022.08.25.505217v1
2022年7月現在、日本ではSARS–CoV-2オミクロンBA.5亜種が流行している。最近出現したOmicron BA.2.75は、さらに世界を心配させている。研究では、Wuhan、Alpha、Beta、Gamma、Delta、Omicron BA.1およびBA.2といった異なるSARS–CoV-2亜型の感染力を予測・比較する数理モデルを開発した。
本研究について
本研究では、SARS–CoV-2 Omicron BA.2.75のような最近出現した変異型による感染リスクと既存の変異型に対する感染リスクを比較予測した。研究チームは、武漢変異体とオミクロンBA.4、BA.5、BA.2.75の間のウイルススパイク(S)遺伝子の進化的距離を評価した。S遺伝子の配列は、Global Initiative on Sharing All Influenza Data (GISAID) のEpiCoVデータベースを検索して、完全なS遺伝子配列を持つものを収集した。これらの変異体の各Sタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に関連するアンジオテンシン変換酵素-2(ACE-2)とのドッキング親和性は、クラスター解析とドッキングシミュレーションによって評価した。
Sタンパク質に関連するアミノ酸配列は、Nextstrainのクレードごとに変種を分類するCoVariantsウェブサイトから収集し、オミクロンBA.4変種は22A、オミクロンBA.5は22B、オミクロンBA.2.75は22Dに分類さ れた。BA.4とBA.5はSタンパク質が類似しているため、S遺伝子とアミノ酸の配列をグループ化して検討した。
研究結果
研究の結果、SARS–CoV-2武漢変異体からの進化的距離が長いものほど、流行につながる可能性が高いことが示された。Omicron BA.2.75変異体は、ウイルスのSタンパク質とACE2タンパク質のドッキング親和性が最も高いことがわかった。BA.4とBA.5は、Omicron BA.2変異体と比較して、S遺伝子の進化的距離が長いものの、観察されるドッキング親和性は低かった。さらに、BA.2.75はBA.2と比較して、進化距離が長く、ドッキング親和性も高かった。このことから、BA.2.75は宿主細胞への侵入能力が高く、現在市販されているSARS–CoV-2ワクチンはこの変異型に対して有効でないことが示唆された。
結論
本研究の結果、SARS–CoV-2 オミクロン BA.2.75 変異体の感染力は、S遺伝子の進化距離が長いことと、ウイルスのSタンパク質とACE2とのドッキングシミュレーションにより、著しく高いことが明らかになった。研究者らは、Omicron BA.2.75は世界的な健康危機を引き起こす危険性が高いとみている。