イギリスと香港のコホートにおけるコロナ後遺症のリスクについて

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最近のeClinicalMedicine Journalに掲載された研究では、イギリス(UK)と香港(HK)における新型コロナウイルス感染症2019(COVID-19)の長期後遺症(コロナ後遺症)のリスクが評価された。

コロナ後遺症(別名:PASC)とは、COVID-19の初期発病後に持続する、いくつかの臓器系に関わる症状と徴候を指す。これは重要な公衆衛生上の問題となっており、統系的なレビューでは、急性COVID-19からの生存者の最大80%が少なくとも一つの症状に苦しんでいるといわれている。

今回の研究では、UKとHKのCOVID-19生存者における長期後遺症のリスクを研究者が調査した。彼らは患者の電子医療記録をUKバイオバンク(UKB)とHK病院機構(HKHA)から入手した。重度急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARSCoV-2)検査が陽性でない個体を対照群とした。

研究の結果、UKから16,400人、HKHAから535,186人のCOVID-19患者が特定された。約47%の患者が男性で、HKHAとUKBの被験者の平均年齢はそれぞれ54.1歳、68.1歳だった。患者群と比較して、対照群は心房細動、深部静脈血栓症(DVT)、心不全、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性肺疾患、不安障害、PTSD、発作、急性腎疾患、末期腎疾患、間質性肺疾患、膵炎、心血管死、冠状動脈病、全原因死亡率のリスクが高まった。

HKのCOVID-19の場合、肝損傷の発症率が高かった。一方、UKの場合はベル麻痺、心筋梗塞(MI)、脳卒中の発症率が高かった。患者の年齢、性別、ワクチン接種状況、既存の疾病の重症度などによるサブグループ分析では、重症のCOVID-19患者、女性、ワクチン接種回数が2回未満の患者、65歳以上の高齢者、及び、チャールソン合併症指数(CCI)が4以上の患者が他の患者よりもコロナ後遺症のリスクが高かった。

研究者らは、UKとHKの患者の間で心血管系、精神科、腎臓、呼吸器、肝臓系を含む多種多様なコロナ後遺症の発症率が上昇していることを報告している。これらのリスクは、女性、高齢者、重症患者、既存疾患を持つ患者、ワクチン接種回数が2回未満の患者の中でより大きかった。ただし、この研究は無症状のCOVID-19症例の検出漏れや検出バイアス、検証未実施の交絡因子によるバイアスの可能性など、いくつかの制限を持つ。

COVID-19の既往がある患者(症例)は、OVID-19感染歴なし(コントロール)と比較すると、心不全(HR 1.82; 95% CI 1.65, 2.01)、心房細動(1.31; 1.16, 1.48), 冠動脈疾患(1. 32; 1.07, 1.63)、深部静脈血栓症(1.74; 1.27, 2.37)、慢性肺疾患(1.61; 1.40, 1.85) 、急性呼吸困難症候群 (1.89; 1.04, 3.43) 、間質性肺疾患 (3.91; 2. 36, 6.50)、発作(2.32; 1.12, 4.79)、不安障害(1.65; 1.29, 2.09)、心的外傷後ストレス障害(1.52; 1.23, 1.87), 末期腎不全(1.76; 1.31, 2.38)、急性腎傷害 (2. 14、1.69、2.71)、膵炎(1.42、1.10、1.83)、心血管(2.86、1.25、6.51)および全死因死亡(4.16、2.11、8.21)となった。主要な心血管イベントの発生率は、HKHAとUKBの両方の症例で別々に高いことが観察された。