- Eales, O. et al. (2023) “Dynamics of SARS–CoV-2 infection hospitalisation and infection fatality ratios over 23 months in England”, PLOS Biology, 21(5), p. e3002118. doi: 10.1371/journal.pbio.3002118. https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.3002118
背景
SARS–CoV-2は世界的に病気や死亡率を増加させている。2021年1月、英国ではSARS–CoV-2 Alphaの出現後に入院や死亡が大幅に増加し、全国的なロックダウンと並行して大規模なワクチン接種プログラムが実施された。その結果、COVID-19の症例、入院、死亡が急減し、2021年3月以降は制限が緩和された。しかし、2021年4月にSARS–CoV-2 Deltaが出現し、再びパンデミックが拡大し始めた。2021年7月には国内の制限が全て解除され、パンデミックが始まって以来見られなかった程の社会的開放が進行した。
研究とその結果
本研究では、SARS–CoV-2の入院率(IHR)と感染死亡率(IFR)のダイナミクスを英国で23ヶ月間にわたって調査した。5歳以上の対象者に自己採取スワブテストを送り、COVID-19の症例、入院、死亡、ワクチン接種のデータを公式政府サイトから取得した。スワブテストが陽性となった日から重篤な症状が現れるまでの時間は、研究期間中に短縮した。特に、2020年5月から2022年3月の間に実施されたREACT-1研究では、重篤な結果が発生するまでのタイムラグが変動した。
全体的に見て、入院率(IHR)と感染死亡率(IFR)は時間とともに減少し、特に65歳以上の人々におけるIHRとIFRは大幅に減少した。また、SARS–CoV-2 AlphaやDeltaの感染が増えた時期、ワクチンの接種が進んだ時期、ブースターワクチンの接種が増えた時期など、特定の期間におけるIHRとIFRは大幅に変化した。
結論
本研究は、SARS–CoV-2感染のコミュニティ内での存在と重篤な症状との時間的関連性を示した。スワブの陽性推定値とCOVID-19の症例、入院、死亡の時間ラグの違いを評価することで、SARS–CoV-2のIHR、IFR、症例検出率を推定した。この結果、英国におけるSARS–CoV-2感染の重篤度が時間とともに減少したことが明らかとなった。コミュニティベースの研究は、感染レベルの偏りのない時間的推定値を提供し、IHRやIFRの変化を迅速に検出することが可能である。これにより、適切な介入が非常に効果的であるときに早期警告を発することができる。