Long Covidの脳への影響

軽症例でも脳機能に影響

ブラジルで開催された神経科学と神経技術に関する会議で、COVID-19が脳に長期的な影響を及ぼす可能性を示唆する複数の研究が発表された。

発表された研究の一つでは、COVID-19罹患後3カ月後のMRI検査画像を解析した結果、軽症例であっても脳の灰白質減少と脳の過剰接続が見られた。研究者たちは、これらの変化が不安や抑うつなどの精神神経症状と関連している可能性を指摘している。また、このような変化が持続的なものなのかどうかは現時点では不明である。

別の研究では、COVID-19罹患後200日経過した銀行員の調査が行われた。この調査では、被験者の半数以上が記憶障害 (52%)、疲労 (48%)、不安 (38%) を訴えていた。研究責任者は、このような健康問題が経済的な損失にもつながるとして、特効薬の開発を急ぐ重要性を訴えている。

COVID-19ウイルスの脳への侵入経路

一方、別の研究では、COVID-19ウイルスが脳に侵入する経路として以下の3つが考えられるとしている。

  1. 鼻腔から嗅神経を通って脳の嗅球へ到達
  2. 呼吸器系の損傷により、ウイルスが血液中に侵入し、ACE2と呼ばれる酵素を介して脳へ到達
  3. 目や視神経を通して脳へ到達 (ただし、研究者たちは目でのウイルスの量は多くないと指摘している)

特に、脳の発達が盛んな10歳未満の子供の場合、ウイルス感染による脳への影響はより深刻となるおそれがあるとしています。

ブレインフォグの原因と子供の健康への影響

研究者たちは、COVID-19が免疫系の過剰な反応、細胞死、炎症を引き起こすことで、脳のさまざまな領域に影響を及ぼし、ブレインフォグを引き起こすと考えている。また、記憶障害は短期記憶、ワーキングメモリ、集中力、意思決定、混乱、日常生活動作への支障など、幅広い症状が現れるとしています。特に、発育段階にある子供は記憶障害の影響を受けやすい可能性が高く、今後数年間にわたって自信や発達に悪影響を及ぼすおそれがあると警鐘を鳴らしている。

論文の著者たちは、SARS-CoV-2感染症を予防する最良の方法はワクチン接種であるとし、マスク着用や社会的距離の確保などの非薬物介入措置も重要であるとしている。そのうえで、ウイルスの複製を抑える新薬の開発が、COVID-19の感染拡大防止とLong COVID患者の減少に繋がるとしています。