新型コロナ軽症者に対するモルヌピラビル投与は5日では短すぎる

  • Standing, J. F., Buggiotti, L., Guerra-Assuncao, J. A., Woodall, M., Ellis, S., Agyeman, A. A., Miller, C., Okechukwu, M., Kirkpatrick, E., Jacobs, A. I., Williams, C. A., Roy, S., Martin-Bernal, L. M., Williams, R., Smith, C. M., Sanderson, T., Ashford, F. B., Emmanuel, B., Afzal, Z. M., … Yongblah, F. (2024). Randomized controlled trial of molnupiravir SARS-CoV-2 viral and antibody response in at-risk adult outpatients. Nature Communications, 15(1), 1652. https://doi.org/10.1038/s41467-024-45641-0

新型コロナウイルスに感染した軽症者向けの治療薬としてモルヌピラビルが注目されているが、この薬剤がウイルスの排除、抗体産生、そして変異に与える影響はまだ十分に解明されていない。

今回、発症から5日以内の軽症者の方を対象に大規模な臨床試験が行われた。参加者はモルヌピラビル投与群(253名)と、通常の治療を行う対照群(324名)に分けられた。

研究では、ウイルスの量や抗体価の変化、そしてモルヌピラビルの投与がウイルスの全ゲノム配列に与える影響が調べられた。

その結果、モルヌピラビルは確かにウイルスの量を減らす効果があったが、ほとんどのケースで発症から5日目でもまだウイルスが検出された。さらに、投与後9日目(治療終了後7日目)には、モルヌピラビル投与群の方が対照群に比べて、ウイルスの持続性が高く、新型コロナウイルス spike タンパク質に対する抗体価が低かった。

また、遺伝子配列の連続的な解析によると、モルヌピラビル投与群では変異が増加していることが明らかになった。特に、治療終了後に検出されたウイルスでは、変異率が高かった。ただし、両方のグループでウイルスの複製能力に大きな違いは見られなかった。

この研究結果は、現在の5日間のモルヌピラビル投与では治療期間が短すぎることを示唆している。今後、投与期間を延長することで、治療中に変異を起こしたウイルスが人に感染するリスクを減らすことができるかどうかが検討される必要である。