スウェーデンの新型コロナウイルス対応の失敗

  • Brusselaers, N., Steadson, D., Bjorklund, K., Breland, S., Stilhoff Sörensen, J., Ewing, A., Bergmann, S., & Steineck, G. (2022). Correction: Evaluation of science advice during the COVID-19 pandemic in Sweden. Humanities and Social Sciences Communications, 9(1), 239. https://doi.org/10.1057/s41599-022-01254-w

スウェーデンは、新型コロナウイルスによる深刻なパンデミックを防ぐための素地を持っていた。280年以上にわたる政治機関、行政機関、科学界間の連携は、予防医療分野で多くの成果を生み出してきた。スウェーデン国民は高い識字率を持ち、権威や指導者への信頼度も高かった。

しかし、2020年には、隣国のノルウェーと比較してスウェーデンのCOVID-19死亡率は10倍高かった。本稿では、ナラティブアプローチを用いて、スウェーデンのCOVID-19政策と科学的証拠の役割、そして科学的誠実さを評価し、なぜこのような事態になったのかを理解しようとするものである。

我々は、主要な当局者や責任ある政治家が科学的方法論を遵守せず、代替案も妥当とみなされた結果、恣意的な政策決定がなされたと主張する。2014年、公衆衛生庁は5年間の再編を経て、感染症制御研究所と合併したが、2010年から2012年にかけて6人の教授がカロリンスカ研究所に移籍し、公衆衛生庁は科学的専門知識を失った。

スウェーデンのパンデミック戦略は、「自然な」集団免疫獲得を目指し、社会のシャットダウンを回避することに注力しているように見えた。公衆衛生庁は、国内の科学者や国際機関からの助言を極端な立場とみなし、メディアや政治機関に自らの政策を受け入れるように仕向けた。

スウェーデン国民は、SARS-CoV-2が空気感染する基本的な事実、無症状でも感染させる可能性があること、そしてマスクが着用者と他者を守ることを知らされないままにされた。

法的強制力はほとんど使われず、個人責任に依存した勧告が一般的だった。酸素が十分に備蓄されていたにも関わらず、多くの高齢者はモルヒネを投与され、事実上安楽死させられた。

今後パンデミックに際してより良い対応を行うためには、とりわけ公衆衛生庁における科学的方法論の再構築が不可欠である。感染症制御研究所を独立した機関として再設置することができれば、大きな違いが生じるだろう。

COVID-19パンデミックでの失敗を繰り返さないためにも、スウェーデンは自国の政治文化と意思決定者の責任の欠如について自己批判的なプロセスを開始することを勧める。