新型コロナ軽症患者に対するパキロビッド投与は、症状が持続的に消失するまでの時間に影響を与えない

  • Hammond, J., Fountaine, R. J., Yunis, C., Fleishaker, D., Almas, M., Bao, W., Wisemandle, W., Baniecki, M. L., Hendrick, V. M., Kalfov, V., Simón-Campos, J. A., Pypstra, R., & Rusnak, J. M. (2024). Nirmatrelvir for Vaccinated or Unvaccinated Adult Outpatients with Covid-19. New England Journal of Medicine, 390(13), 1186–1195. https://doi.org/10.1056/NEJMoa2309003

この論文は、軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 患者に対する抗ウイルス薬Nirmatrelvirの効果を調べたランダム化比較臨床試験 (治験) の結果について報告している。

背景

Nirmatrelvirは、Ritonavirとの併用で新型コロナウイルスに対して効果のある抗ウイルス薬として承認されている。しかし、標準的な重症化リスクを持つ患者や、ワクチンを接種済みで重症化リスク因子を1つ以上持つ患者に対する有効性は確立されていなかった。

試験方法

この試験は、症状発症から5日以内のCOVID-19陽性患者を対象とし、Nirmatrelvir-Ritonavir投与群とプラセボ投与群に1:1の割合でランダムに割り当てた。対象者は、完全ワクチン接種済みで重症化リスク因子を1つ以上持つ患者、もしくはワクチン未接種または過去1年以内に接種していない患者であった。参加者は、1日目から28日目まで毎日、あらかじめ定められたCOVID-19の症状の有無と程度を記録した。主要評価項目は、全ての対象COVID-19症状が持続的に消失するまでの時間であった。また、28日目までのCOVID-19関連入院と死亡についても評価された。

結果

ランダム化され解析対象となった1296人の参加者の中で、1288人が少なくとも1回はNirmatrelvir-Ritonavir (654人) またはプラセボ (634人) を投与され、ベースライン後 (投与開始後) の診察が少なくとも1回あった。

その結果、全ての対象COVID-19症状が持続的に消失するまでの時間の中央値は、Nirmatrelvir-Ritonavir群で12日、プラセボ群で13日であり、有意な差はなかった (p=0.60)。COVID-19関連入院または死亡は、Nirmatrelvir-Ritonavir群で5人 (0.8%)、プラセボ群で10人 (1.6%) 見られ、差は-0.8% (95%信頼区間: -2.0~0.4) であった。

副作用の発現率は両群で同程度 (Nirmatrelvir-Ritonavir群: 25.8%、プラセボ群: 24.1%) であった。Nirmatrelvir-Ritonavir群で最も多く報告された治療関連の副作用は、味覚異常 (5.8%) と下痢 (2.1%) であった。

結論

Nirmatrelvir-Ritonavir投与とプラセボ投与の間で、COVID-19の全ての症状が持続的に消失するまでの時間に有意な差はなかった。