COVID-19感染とワクチン接種がギラン・バレー症候群発症リスクに与える影響に関する研究
背景と目的
ギラン・バレー症候群(GBS)の発症リスクと、COVID-19感染、およびCOVID-19ワクチンの接種との関連性については、現時点では結論が出ていない。本研究では、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染とCOVID-19ワクチン接種、それぞれとGBS発症との関連性を評価することを目的とした。
方法
イスラエル最大の医療機関からの、16歳以上で過去にGBSと診断されていない319万3951人を対象に、nested case-control study(症例対照研究の一種)を実施した。参加者を2021年1月1日から2022年6月30日まで追跡し、GBS発症の有無を調べた。GBS患者1人ごとに、年齢と性別が一致するコントロールを10人ランダムに選択し、症例とコントロール両方について、発症前6週間以内にSARS-CoV-2感染とCOVID-19ワクチン接種歴があったかどうかを調べた。
結果
追跡期間中にGBSと診断された患者は76人で、コントロールは760人マッチングされた。症例ではSARS-CoV-2検査陽性者が9人(11.8%)おり、コントロールでは18人(2.4%)だった。COVID-19ワクチン接種歴は、症例では8人(10.5%)おり、全員がファイザー・ビオンテック(BNT162b2)ワクチンだった。コントロールでは136人(17.9%)が接種歴を持ち、うち134人がファイザー・ビオンテック製だった。多変量条件ロジスティック回帰モデルによる解析で、SARS-CoV-2感染とCOVID-19ワクチン接種それぞれと関連するGBS発症オッズ比は、SARS-CoV-2感染が6.30(95%信頼区間2.55-15.56)、COVID-19ワクチン接種が0.41(95%信頼区間0.17-0.96)であった。解析は発症前4週と8週についても行ったが、結果は同様であった。ただし、4週に関してはCOVID-19ワクチン接種については統計的に有意ではなかった。
考察
本研究の結果は、SARS-CoV-2感染はGBS発症リスクの上昇と関連している一方で、ファイザー・ビオンテック製COVID-19ワクチンはGBS発症リスクの低下と関連していることを示唆している。