「ブレインフォグ」の原因は脳血管からの出血

  • Greene, C., Connolly, R., Brennan, D., Laffan, A., O’Keeffe, E., Zaporojan, L., O’Callaghan, J., Thomson, B., Connolly, E., Argue, R., Martin-Loeches, I., Long, A., Cheallaigh, C. N., Conlon, N., Doherty, C. P., & Campbell, M. (2024). Blood–brain barrier disruption and sustained systemic inflammation in individuals with long COVID-associated cognitive impairment. Nature Neuroscience, 27(3), 421–432. https://doi.org/10.1038/s41593-024-01576-9

背景と目的

コロナウイルス感染症2019 (COVID-19) の病態形成には血管障害が関与している可能性が示唆されており、特に「ロングCOVID」と呼ばれる後遺症の神経症状を引き起こす素因となっているかもしれない。しかし、ロングCOVIDにおいて血液脳関門 (BBB) 機能がどのように影響を受けるかは明らかになっていない。本研究では、脳霧と呼ばれる認知機能障害のあるロングCOVID患者において、BBB障害が明らかになることを示す。

方法

動脈血灌流画像 (DCE-MRI) を用いて、脳霧のあるロングCOVID患者におけるBBB障害を調べた。また、末梢血単核細胞の転写体解析を行い、脳霧のある症例において凝固系機能の異常と獲得性免疫反応の低下を明らかにした。さらに、末梢血単核細胞とヒト脳内皮細胞の接着能を in vitro で評価し、さらにロングCOVID患者血清を脳内皮細胞に曝露することで炎症マーカーの発現を誘導させた。

結果

脳霧のあるロングCOVID患者において、DCE-MRIによりBBB障害が認められた。末梢血単核細胞の転写体解析では、脳霧のある症例において凝固系機能の異常と獲得性免疫反応の低下がみられた。また、in vitro 実験では、末梢血単核細胞はヒト脳内皮細胞への接着能が高く、ロングCOVID患者血清を曝露させた脳内皮細胞では炎症マーカーの発現が誘導された。

結論

本研究結果は、ロングCOVIDに伴う脳霧の重要な特徴として、持続的な全身性炎症と持続的な局所的なBBB機能障害が挙げられることを示唆している。