- Brogna, C., Montano, L., Zanolin, M. E., Bisaccia, D. R., Ciammetti, G., Viduto, V., Fabrowski, M., Baig, A. M., Gerlach, J., Gennaro, I., Bignardi, E., Brogna, B., Frongillo, A., Cristoni, S., & Piscopo, M. (2024). A retrospective cohort study on early antibiotic use in vaccinated and unvaccinated COVID‐19 patients. Journal of Medical Virology, 96(3), e29507. https://doi.org/10.1002/jmv.29507
この研究は、COVID-19急性期と回復期におけるSARS-CoV-2 ウイルスの細菌叢 (さいきんそう) への影響が疾患の進行に重要であることを示唆する。研究では、腸内細菌叢でのウイルス複製を防ぎ、ヒト由来の細菌叢による毒素産生を抑制するために、早期の抗生物質投与が重要である可能性を検討している。
対象は211名のCOVID-19患者で、59名がSARS-CoV-2 mRNAワクチンを接種しており、残りの152名は未接種であった。患者は、2020年9月から2022年10月までの3つの波 (プレデルタ、デルタ、オミクロン変異株出現時期に対応) に分けて登録された。登録基準は、咽頭ぬぐい検査または便検査陽性、中等症症状で抗生物質を投与された患者、および罹患期間中の血液酸素飽和度測定であった。
研究では、アモキシシリン・クラバラン酸 (875mg + 125mg 錠、12時間毎) とリファキシミン (400mg 錠、12時間毎) の併用、またはアジトマイシン (500mg 錠、24時間毎) とリファキシミン併用を第一選択とし、COVID-19患者ケアにおける腸内細菌叢とその影響に焦点を当てた。
主要評価項目は、治療開始後3日と9日時点での抗生物質投与群と非投与群の平均回復日数の差を定量化した推定平均治療効果 (治療効果量) であった。
解析の結果、ワクチン接種歴の有無にかかわらず、中央値の罹患期間は7日間 (四分位範囲 [IQR] 各グループ6-9日間) であった (回復粗ハザード比 [HR] = 0.94, p = 0.700)。プレデルタ・デルタ波の罹患期間中央値は8日間 (IQR 7-10日間) であったが、オミクロン株では短く、6.5日間 (IQR 6-8日間; 回復粗HR = 1.71, p < 0.001) であった。この結果は多変量解析でも支持された。
併存疾患のある患者は、ない患者 (中央値7日間、IQR 6-8日間) に比べて有意に罹患期間が長かった (中央値8日間、IQR 7-10日間; 粗HR = 0.75, p = 0.038) が、多変量解析では統計学的有意差が消失した。
早期の抗生物質投与は、有意に回復期間を短縮させた (粗HR = 4.74, p < 0.001)。一方、非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) の併用は、罹患期間を短縮せず、多変量解析ではむしろ延長させた (p = 0.041)。ステロイド剤を中央値3日間 (IQR 3-6日間) 投与された42人のサブグループは、投与されなかった群 (中央値7日間、IQR 6-8日間) と比較して回復期間が長かった (中央値9日間、IQR 8-10日間; 粗HR = 0.542, p < 0.001)。
本研究では、早期抗生物質投与を受けた患者において、回復期間が統計学的に有意に短縮することが観察された。また、早期の抗生物質投与は、血液酸素飽和度をより高レベルに維持する上で重要であった。さらに、急性期に最初の3日間、7日間の抗生物質投与を受けた患者の多数は、Long-COVIDを発症しなかったことも注目に値する。