COVID-19外来治療とLong Covid発症率の10ヶ月追跡調査

  • Bramante, C. T., Buse, J. B., Liebovitz, D. M., Nicklas, J. M., Puskarich, M. A., Cohen, K., Belani, H. K., Anderson, B. J., Huling, J. D., Tignanelli, C. J., Thompson, J. L., Pullen, M., Wirtz, E. L., Siegel, L. K., Proper, J. L., Odde, D. J., Klatt, N. R., Sherwood, N. E., Lindberg, S. M., … Zinkl, L. (2023). Outpatient treatment of COVID-19 and incidence of post-COVID-19 condition over 10 months (COVID-OUT): A multicentre, randomised, quadruple-blind, parallel-group, phase 3 trial. The Lancet Infectious Diseases, 23(10), 1119–1129. https://doi.org/10.1016/S1473-3099(23)00299-2

背景

Long Covidと呼ばれるCOVID-19後遺症は、何百万もの人々に影響を与える可能性のある慢性疾患として注目されている。我々は、SARS-CoV-2感染初期の外来治療薬としてメトホルミン、イベルメクチン、フルボキサミンを投与することでLong Covidのリスクを下げられるかどうかを調べる試験を行った。

方法

アメリカ合衆国の6施設で多施設ランダム化二重盲検(参加者・研究者・ケア提供者・評価者全員が被験剤の情報を知らない)、4群並行比較試験 (COVID-OUT) を実施した。対象は30-85歳の過体重もしくは肥満で、COVID-19症状発症から7日未満であり、登録3日以内にPCR検査もしくは抗原検査で陽性が確認された成人とした。参加者は無作為に6群に分けられ、メトホルミン+イベルメクチン、メトホルミン+フルボキサミン、メトホルミン+プラセボ、イベルメクチン+プラセボ、フルボキサミン+プラセボ、プラセボ+プラセボを投与した。主要評価項目は14日時点での重症COVID-19であり、そのデータは既に公表されている。本試験は遠隔で全国展開されたため、事前に設定された主要解析対象集団は修正ITT集団であり、投薬しなかった参加者は除外された。Long Covid診断は医師によるもので、事前に定められた長期的な副次的評価項目とした。本試験はClinicalTrials.gov (NCT04510194) に登録されており、終了している。

結果

2020年12月30日から2022年1月28日までの間に6602名がスクリーニングされ、1431名が登録・割り付けられた。投薬を行い修正ITT集団に組み込まれた1323名の中で、1126名が長期追跡調査への同意を行い、180日目のLong Covid評価後、少なくとも1回の調査を完了した(564名がメトホルミン、562名が同量のプラセボを投与された。メトホルミン対プラセボ試験の一部参加者はさらにイベルメクチンまたはフルボキサミンをランダムに割り当てられた)。1126名中1074名 (95%) が少なくとも9ヶ月の追跡調査を完了した。参加者の内訳は女性632名 (56.1%)、男性494名 (43.9%) で、女性のうち44名 (7.0%) が妊娠中だった。中央値年齢は45歳 (IQR 37-54) で、中央値BMIは29.8 kg/m2 (IQR 27.0-34.2)だった。全体として、1126名中93名 (8.3%) が300日までにLong Covidと診断された。300日時点でのLong Covid累積発症率は、メトホルミン投与群で6.3% (95% CI 4.2-8.2) であり、同一のメトホルミン偽薬投与群では10.4% (7.8-12.9) であった (ハザード比 [HR] 0.59, 95% CI 0.39-0.89; p=0.012)。メトフォルミンの効果は事前に設定されたサブグループ間で一貫していた。症状発症後3日以内にメトホルミンを開始した場合、HRは0.37 (95% CI 0.15-0.95) だった。イベルメクチン (HR 0.99, 95% CI 0.59-1.64) やフルボキサミン (1.36, 0.78-2.34) では、プラセボとの比較でLong Covid累積発症率に影響は見られなかった。

考察

外来治療薬としてのメトホルミンは、Long Covid発症率を約41%低下させ、プラセボと比較して4.1%の絶対減少をもたらした。メトホルミンはCOVID-19の外来治療薬として臨床的に有用であり、世界中で入手可能で、安価かつ安全である。