自己免疫炎症性疾患はCOVID-19重症化の要因ではあるが、ワクチンの接種・ブースター接種は重症化リスクが低減

2024年2月28日時点で、世界的なCOVID-19パンデミックは700万人を超える死者を出しており、特にリウマチ、多発性硬化症、アレルギー性喘息などの自己免疫炎症性疾患 (IMID) 患者にとって大きなリスクとなっている。IMIDsは慢性的な炎症と免疫系の調節異常を特徴とし、COVID-19の重症化を悪化させる可能性がある。免疫機能不全、免疫調節薬の使用、心疾患や糖尿病などの併存疾患が重症化に寄与する因子として考えられる。

IMIDsがCOVID-19の重症化リスク要因でない可能性が示された研究が、「The Lancet Digital Health」に掲載された。この研究は、大規模なアメリカの医療システムにおいて、IMIDs、免疫調節薬、および併存疾患を持つ患者の重篤なCOVID-19のアウトカムを分析した。研究は、Providence St Joseph Healthの電子健康記録(EHR)から取得された臨床データを基に行われ、オミクロン株以前(2020年3月1日から2021年12月25日)とオミクロン株優勢期(2021年12月26日から2022年8月30日)の二つの期間に分けて調査された。

研究対象はIMIDs患者と非IMIDs患者であり、COVID-19感染前に疾患、薬剤、併存疾患に関するデータが記録されていた。統計解析には、機械学習モデルが用いられ、患者の人口統計、ワクチン接種状況、活動性併存疾患、IMIDs診断、免疫調節薬の使用などのデータが分析された。特に、XGB(Extreme Gradient Boosting)モデルが非線形データを効率的に処理する能力を持っており、健康アウトカムの分類において優れたパフォーマンスを示した。

研究結果によると、COVID-19の検査を受けた216万656人のうち、290,855人(13.4%)がCOVID-19に感染しており、そのうち15,397人(5.3%)がIMIDs患者だった。オミクロン株優勢期には、全体の患者と陽性者の併存疾患率が高く、ワクチン接種率も向上していた。

IMIDs患者は、オミクロン株以前の期間と比較して、入院率(14.6%対13.7%)および死亡率(3.9%対3.1%)が高かった。また、オミクロン株優勢期には、入院率(14.8%対11.8%)および死亡率(2.6%対1.6%)でも非IMIDs患者よりも高かった。

この研究は、特定の併存疾患や高齢が重症COVID-19のリスク要因であることを示しており、ワクチン接種や追加接種が重症化を防ぐ重要な要素であることを強調している。さらに、喘息や乾癬は重症化リスクを軽減する関連が見られ、IMIDsとCOVID-19の間の複雑な相互作用を浮き彫りにしている。

結論

本研究は、大規模な電子カルテデータと機械学習を用いて、IMID患者におけるCOVID-19の重症化リスクを包括的に評価した初めての研究である。

IMIDs患者は、オミクロン株優勢期を含むすべての期間において、入院と死亡のリスクが有意に高かった。しかし、ワクチン接種はこれらのリスクを軽減するのに有効であった。

年齢、併存疾患、IMIDの種類、免疫調節薬の使用など、複数の要因が重症化リスクに影響を与えた。

さらに研究が必要ではあるが、本研究結果は、IMID患者に対するCOVID-19予防と治療戦略の開発に役立つ可能性がある。