COVID-19抗体はなぜすぐに消えてしまうのか?

2024年3月18日、メリーランド大学医学部の人間ウイルス学研究所による研究が『感染症学雑誌』に発表された。この研究は、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)感染後の抗体反応に注目している。過去の例では、はしかや風疹、破傷風やジフテリアのワクチンなどは、長期間にわたる抗体反応を引き起こすが、新型コロナウイルス感染またはそのワクチン接種では短期間の抗体反応しか認められない。この研究では、COVID-19感染者20人の骨髄と血漿を分析し、スパイク特異的な長期持続するプラズマ細胞が骨髄で不十分に生成されていることを発見した。これが回復中のCOVID-19患者における抗体反応の短期間性の理由と考えられる。

研究の共著者であるジョージ・ルイス博士(人間ウイルス学研究所ワクチン研究部門ディレクター)は、自然感染後の耐久性のある抗体生成の欠如が、特定のウイルスに対して以前にも指摘されていた現象であることを明らかにした。過去10年間、研究者たちはHIVにおけるこの問題のメカニズムを議論し、研究を続けてきた。COVID-19のスパイクタンパクに対する抗体反応の持続性の低さも、骨髄内の長期持続する抗体産生細胞の不足が原因である可能性が高いとされている。

研究チームは、この発見がSARS-CoV-2およびHIVに対する長期的な抗体生成を誘導するワクチンや治療法の開発に役立つと述べている。今後、この問題の細胞および分子的基盤を解明するための新たな研究が計画されている。メリーランド大学医学部のディーンであるマーク・T・グラッドウィン博士は、この新しい研究がSARS-CoV-2に対する抗体反応が速やかに減少する理由を示唆しており、今後の研究がこの問題の詳細な調査に鍵となると述べている。

  • Tehrani, Z. R., et al. (2024). Deficient Generation of Spike-Specific Long-Lived Plasma Cells in the Bone Marrow After Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 Infection. The Journal of Infectious Diseasesdoi.org/10.1093/infdis/jiad603.