LongCOVIDの48%にエピソード記憶障害、27%に注意力、作業記憶、処理速度、言語流暢性など認知機能にも障害が見られ、左後上側頭回の灰白質が減少、白質が損傷

  • Serrano Del Pueblo, V. M., Serrano-Heras, G., Romero Sánchez, C. M., Piqueras Landete, P., Rojas-Bartolome, L., Feria, I., Morris, R. G. M., Strange, B., Mansilla, F., Zhang, L., Castro-Robles, B., Arias-Salazar, L., López-López, S., Payá, M., Segura, T., & Muñoz-López, M. (2024). Brain and cognitive changes in patients with long COVID compared with infection-recovered control subjects. Brain, awae101. https://doi.org/10.1093/brain/awae101

要旨
SARS-CoV-2感染者の2.5~28%が、急性疾患後数ヵ月間、長いCOVIDまたは症状の持続に苦しんでいる。多くの症状は神経学的なものであるが、神経心理学的障害の根底にある脳の変化は不明なままである。本研究の目的は、Long COVIDにおける認知プロファイル、脳変化のパターン、および両者の潜在的関連性を詳細に説明することである。

これらの目的を達成するために、COVID-19後に神経症状が持続した患者83人と、COVID-19に罹患したが神経症状が持続しなかったために選ばれた健常対照者22人を募集した。患者と対照者の年齢、性別、教育レベルは一致させた。すべての参加者は、臨床面接、包括的標準化神経心理学的検査、構造MRIによって評価された。

ACE IIIスクリーニングテストで評価したLong COVID患者の平均グローバル認知機能(Overall Cognitive level – OCLz= -0.39± 0.12)は、感染回復した対照群(OCLz= +0.32± 0.16、p< 0.01)を有意に下回った。その結果、Long COVID患者の48%にエピソード記憶障害がみられ、27%には全体的な認知機能、特に注意力、ワーキングメモリー、処理速度、言語的流暢性が低下していた。MRI検査では、灰白質形態測定と全脳構造結合解析が行われた。感染症から回復した対照群と比較して、患者は左後上側頭回を中心とする特定のクラスターで皮質が薄くなっていた。さらに、患者の大脳白質の広範囲において、対照群と比較して、分画異方性(FA)が低く、半径方向拡散率(RD)が高いことが観察された。認知状態と脳の異常との相関から、白質領域の結合性の変化とエピソード記憶、認知機能全般、注意力、言語流暢性の障害との関係が明らかになった。

本研究は、神経学的長COVID患者が、特にいくつかの白質領域において脳の変化を被っており、これらが特定の認知機能の障害と関連していることを示している。