COVID-19感染で優秀な成績を収める学生が43%減

  • Amer, F., López, T., Gil-Conesa, M., Carlos, S., Ariño, A. H., Carmona-Torre, F., Martínez-González, M. A., & Fernandez-Montero, A. (2023). Association between COVID-19 and outstanding academic performance at a Spanish university. Archives of Public Health, 81(1), 213. https://doi.org/10.1186/s13690-023-01225-w

目的

本研究は、スペインにあるナバラ大学の学部生を対象に、COVID-19感染が学業成績に与える影響を調査することを目的とした。

方法

2020-2021学年度に全通学対面授業を実施した同大学では、学部生7,039人を対象に調査が行われた。学生全員にアンケートが配布され、社会人口学的質問や行動に関する質問、COVID-19症状に関する一般質問などが含まれた。また、学年度を通してPCR検査が定期的に実施され、SARS-CoV-2感染の有無が確認された。さらに、学業成績情報は、学年末に大学から取得された。

結果

参加者のうち658人 (9.3%) がCOVID-19に感染していた。そのうち、優秀な成績を収めたのは約4.0%であったが、未感染者の優秀な成績者数は7.3%であった。統計分析の結果、COVID-19に感染した学生は、そうでない学生に比べて優秀な成績を収める可能性が有意に低かったことが明らかになった (オッズ比0.57、95%信頼区間0.38-0.86)。

考察

本研究の結果は、COVID-19感染が学部生の学業成績を低下させる可能性があることを示唆している。若い世代におけるCOVID-19は重症化リスクが低く死亡率も低いものの、倦怠感や頭痛といった長期的な症状 (Long COVID) を引き起こし、日常生活や学業成績に悪影響を及ぼすおそれがある。従って、若年層であってもCOVID-19感染予防に取り組み、特に脆弱な集団への感染拡大を防ぐことが重要である。

本研究の意義は、これまでCOVID-19は若年層に対して重症化リスクが低いと考えられてきたが、学業成績への悪影響を示唆した点にある。また、人種・民族による感受性の違いにも言及しており、今後の研究課題として挙げている。

本研究の限界は、症状を直接測定していない点である。仮に、倦怠感などの症状の有無で学生をグループ分けして分析を行っていた場合、より有意な差が認められた可能性がある。

結論

本研究は、COVID-19が若年層の学業成績に与える可能性のある影響を明らかにした点で重要である。今後、Long COVIDの症状を考慮した研究が行われ、今回の結果が裏付けられることが期待される。