COVID-19対策の意識向上と行動変容は細菌感染の予防に大きな影響を及ぼした

  • Kakimoto, M., Miyamori, D., Omori, K., Kobayashi, T., Ikeda, K., Kashiyama, S., Ohge, H., & Ito, M. (2023). Impact of the early phase of COVID-19 on the trends of isolated bacteria in the national database of Japan: An interrupted time-series analysis. Journal of Infection, 86(2), 147–153. https://doi.org/10.1016/j.jinf.2022.11.025

本研究は、新型コロナウイルス (COVID-19) 流行初期が、日本全国の医療機関から分離された細菌の動向に与えた影響を調べたものだ。

方法

  • 日本のデータベース (J-SIPHE) を用いて、約200施設に入院中の患者から検出された細菌陽性培養結果を抽出した。
  • 集計は、毎月ごとに分離された細菌の種類 (10種) の合計に対する比率で行った。
  • 2019年1月~2020年1月 (13ヶ月分) と、2020年5月~2020年12月 (8ヶ月分) の計21ヶ月分のデータを対象に、中断時系列分析を実施した。

結果

  • 合計36万9210株の細菌が分離された。
  • 分離率が有意に減少したのは、肺炎球菌、インフルエンザ菌、化膿性レンサ球菌の3種で、それぞれ0.272 (95%信頼区間 [CI]: 0.192-0.352)、0.244 (95%CI: 0.174-0.314)、0.324 (95%CI: 0.06-0.589) 減少した。
  • 一方、接触感染経路と考えられる黄色ブドウ球菌など分離率は減少していない。
  • 分離率の傾き変化については、どの菌種でも有意な差は認められなかった。

結論

飛沫感染と考えられる細菌の分離率は、COVID-19流行初期の直後に低下し、その水準が維持された。COVID-19対策の意識向上と行動変容は、特に飛沫感染による細菌感染の予防に大きな影響を及ぼした可能性がある。