イギリスのヨーク大学の研究によると、新型コロナウイルスに感染した人の 28% が、後遺症である「long COVID」を発症する可能性があるという。ロングCOVID は慢性的な症状で、イギリスでは推定 190 万人が罹患しているとされている。
今回の研究では、ロングCOVID患者のおよそ 4人に 1人が脳機能障害(集中力低下、混乱、認知機能障害など)を、3~4人に 1人が不安やうつ病を発症することも明らかにした。しかし、研究結果は、新型コロナウイルスのワクチン完全接種により、脳機能障害のリスクが 4 分の 1 になることを示唆している。
イギリスでは長期の病気休職者が過去最多の 280 万人を記録しており、その大きな要因の一つがlong COVIDである。研究者たちは、このような状況を踏まえ、全労働世代を対象に年間の新型コロナウイルスワクチン接種を展開するよう求めている。
この研究は、世界中の 17 の研究を対象とし、4 万人以上のlong COVID患者を調査したものである。
研究責任者のクリスティーナ・ファン・デル・フェルツ=コーネリス教授は、「今回の研究結果からは、世界中でどれほど多くの人がこの深刻な病状の影響を受けているかが明らかになった。ワクチン接種による脳機能障害リスクの有意な低下は特に重要であり、ワクチン接種プログラムの継続と拡大、特に労働世代への接種を支持する根拠となる」と述べている。
「イギリス社会には、コロナウイルスは終わったという風潮があるが、ロングCOVIDは個人や社会全体に深刻で長期的な影響を与えている。多くの人がこの病状のために職場を離れている。これは経済にも大きな負担となっている」
long COVIDはコロナウイルス感染後に起きる慢性疾患であり、息切れ、心悸亢進、関節痛、集中力の問題などの症状を引き起こす。研究結果はまた、long COVID患者の精神症状や脳機能障害は、時間とともに悪化する可能性があることも示唆している。急性感染から 24 カ月後、人はピーク時の 3 ~ 4 倍の確率で脳機能障害を発症しやすく、うつ病や不安を発症するリスクも約 1.5 倍に上昇する。
ファン・デル・フェルツ=コーネリス教授はさらに、「症状が時間とともに悪化する可能性があるという今回の発見は懸念される。これは、long COVIDと共に生きる中で精神衛生が悪化したり、病状に伴う不確定さが影響しているのかもしれない。しかし、初期の研究では、long COVIDが脳内の神経細胞に影響を与える可能性も示唆されており、これも一因と考えられる」と述べる。
「これほど多くの人が深刻な症状に苦しんでいることを考えると、今回の研究は持続的なワクチン接種プログラムに加え、より手厚いサポートの必要性を明確に示している。イギリスは数少ない専用ロングCOVIDセンターを有する幸運な国の一つではあるが、精神症状と身体症状のより統合的な治療法、効果的な治療、リハビリテーション、作業療法のための資源がさらに必要だ。そうすることで、患者は回復し、キャリアや生活を失うのを回避することができるようになる」